LCCと呼ばれる格安航空会社が、2000年ごろから登場して世界の航空業界は大きく変わりました。
日本でもピーチやジェットスター、エアアジア・ジャパンなど多くの格安航空会社が就航し、路線も拡大、利用者も増加しています。
では、なぜLCCの運賃は安いのでしょうか。
実は、安いには理由があります。
LCCが安い理由を考えていくと、LCCの利用のメリット・デメリットが見えてきます。
LCCの安い理由とは
安全面は法律に従っているので統一
LCC(格安航空会社)は安いというと、安い理由として安全面の整備を削っているのではないかと思う人がいるのではないでしょうか。
日本国内で飛んでいる格安航空会社では、きちんと日本の法律に則った整備が行われており、整備士の資格も共通です。
そのため、LCCだから安全面が置き去りにされているということはありません。
大手だろうがLCCだろうが基準は同じです。
では、どこでコストカットをしているのか、その1つが人件費です。
LCCの人件費削減方
LCCでは、人件費を削減して、その分を航空運賃に跳ね返すことができるようにしています。
人件費の削減としては次のようなことをしています。
- インターネットを活用し、空港カウンターのスタッフを減員。
- 一人がカウンターから搭乗案内まで行うマルチタスク勤務。
- 運航乗務員・客室乗務員の給与体系を大手より低く設定
最初のインターネットを活用し、空港カウンタースタッフの原因は、もはや格安航空会社では当たり前の手法であり、大手でも近年採用されるようになっています。
カウンター業務をできるだけ少なくすることができるようにインターネットで購入や手続きをした人は無料であるのに対して、空港カウンターで航空券を購入したり、手荷物を預け入れしたりする人に対しては手数料を取るようにしています。
逆に言えば、インターネット予約やオンラインチェックインに慣れている人であれば問題なくできますが、こうしたことが苦手な人にとってはLCCの恩恵を受けることができないことにもなります。
マルチタスク勤務は、大手の航空会社ではあまり行いません。就航便数が少ないところでは行いますが、便数が多いところだと乗客をさばききれないので業務を分けています。
LCCでは便数が少ないところでは数人のスタッフがすべての仕事をしているところもあります。
航空会社において、一番人件費がかかるのが運航乗務員(パイロット)と客室乗務員(CA)の給与です。
LCCでは、大手の航空会社と完全に別の給与体系を持っており、運航乗務員や客室乗務員の給与は大手よりも低く抑えられています。
低く抑えられているから質の低い人が集まるのではなく、大手航空会社をリタイヤした後に再就職で飛んでいるベテランパイロットや人気の業界で働きたいと意欲の高い客室乗務員が集まっているので安全面では問題ありません。
もちろん、きちんと日本の航空法を満たした審査や試験を合格している人が飛ばしています。
ハード面に見えるLCCの安い理由
薄利多売方式で利益を出す
LCCでは、安い運賃で利益を出すため、薄利多売方式を採用しています。
これもLCCの安い理由の1つです。
まず、大手の航空会社と比べると1つの航空機に乗ることができる人数が違います。
LCCで多く採用しているA320型機と呼ばれる飛行機の場合、大手航空会社では160席前後が標準です。
一方でLCCでは、180席から190席が設置されており、その分だけ座席の前後間隔が狭くなっています。
このようにできるだけ多くの人を1つの便に乗せることで、1便当たりの収益性を高めています。
サービスは有料にして必要な人だけに
機内サービスもLCCでは工夫されています。
大手航空会社では無料のドリンクサービスがあり、機内モニターが付いています。
さらに最近の航空機ではパソコン用の電源やインターネット接続Wi-Fiも無料で使うことができる飛行機が増えていますが、LCCではこのようなサービスはありません。
機内でのドリンクや食事もすべて有料、中にはブランケットのようなものも有料のところがあります。
受託手荷物も有料になっていることから、サービスに関しては必要な人が追加のお金を支払って受けるというのがLCCでは一般的です。
安い駐機設備と別のターミナル利用
LCCにとって空港施設を利用するときに発生するお金も経営上、重要な出費です。
日本国内で言えば、羽田空港(東京)や伊丹空港(大阪)などは都心部から近く、利用者にとっては使いやすいですが、空港施設の利用料金が高くなっています。
そのため、LCCでは、こうした空港は使わず、できるだけ空港施設利用料金の安いところを利用します。
また、関西国際空港や成田空港のようにメインターミナルを利用すると施設利用料金が高くなるので、メインターミナルから離れたところにある格安航空会社専用のターミナルを利用しているケースもあります。(日本国内には他に那覇空港にあります)
少し極端な例ですが、ヨーロッパ国内線LCCとして確固たる知名度を誇る航空会社にアイルランドのライアンエアーがあります。
この航空会社はイギリスの首都ロンドンのスタンステッド空港を拠点としていますが、この空港は、ロンドンの中心部から50km離れたところにあります。
これは空港利用料金が安いためで、ロンドンという行先に騙されるととんでもなく遠い空港に降ろされるという事態になります。
機材を統一して整備費用と乗務員育成費を圧縮
利用者に大きな影響のないところで工夫しているのが、使用している機材です。
LCCではB737型機やA320型機を多く採用しています。
そして、1つの航空会社で機材を統一するのが一般的です。
このような方式を取っているのも安い理由です。
飛行機では整備する人も乗務する人も1機種につき1つの資格が必要になります。
つまり、複数の航空機を管理しようと思うとたくさんの整備や乗務に関するライセンスを
取得しなければいけません。
LCCでは、こうしたコストを圧縮するため、1つの機材に絞って導入しています。
整備パーツも1種類の機種分だけそろえておけばよいので、その分コスト削減をできるというわけです。
LCCが安い理由から見えるメリット・デメリット
LCCのメリットは
LCCを利用するメリットは、なんといっても価格の安さです。
大手航空会社に比べると半額以下で乗ることも可能ですし、直前でも比較的安い航空券を購入できます。
しかし、安いからと言って「絶対にLCCがよい」と言い切れない部分があります。
LCCの安い理由から見えるデメリット
LCCの安い理由から見えるデメリットとして、「薄利多売方式の欠点」が大きくクローズアップされます。
例えば、LCCでは、1つの飛行機で1日にいくつもの路線を飛ばしています。
当然、1つの路線が遅れれば、芋づる式に遅れていくことになります。
成田空港や福岡空港など、離着陸の時間に制約が設けられている空港では、飛行機が遅れることによって着陸が困難になると予想されるケースでは、欠航することもあります。
このように薄利多売方式であるが故のデメリットが見えてきます。
空港の違いから見えるデメリット
LCCの安い理由から見えるもう1つデメリットが空港の違いです。
例えば、東京から那覇に行くとします。
羽田空港からであれば空港に到着をして、チェックインカウンターで荷物を預け、飛行機に乗り、那覇空港に到着後はゆいレールで市内へとスムーズな動線で進みます。
しかし、LCCを利用するとなると成田空港に移動し、さらにここからLCC専用の第三ターミナルまで数百メートル歩いてチェックイン、那覇空港到着後もLCCターミナルから徒歩またはバスで移動しなければいけない、と移動距離が多くなります。
当然時間もかかりますし、大きな荷物を抱えていれば移動するだけでも一苦労です。
逆に中部国際空港と福岡空港をLCCで移動するのであれば、大手の航空会社と同じターミナルを使っているので移動に苦労はありません。
このように空港によって動線が異なり、しかもLCCの場合は、大手よりも移動距離や時間が長くなることを考えておく必要があります。
まとめ
- LCCが安い理由は、人件費の削減をしたり、仕事においてマルチタスクを導入したりしているためで、安全面に関しては大手と変わらない。
- 薄利多売方式を行っているので座席間隔が狭く、多頻度運航をしている。そのため、多頻度運航による弊害がLCC利用のデメリットになる。
- 空港ターミナルも大手とLCCでは異なることがあり、移動の時間や労力を考えて航空会社を選択することが大切である。
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