LCC(格安航空会社)と聞くと、安全面は大丈夫なのかと心配をする声が多く聞かれます。
飛行機の事故は重大なものになることが多く、生死に関わるので安全でなければ乗りたくないというのが本音です。
LCCのように格安の運賃では「整備にきちんとお金がかけられているのか」心配になる人も多いでしょう。
ここでは、法律と数字から見えるLCCの安全性を解説します。
LCCの整備基準は
日本国内を飛んでいる全ての航空会社は日本の航空法が適用
日本国内はたくさんの航空会社があり、サービス面や運賃面での競争が起こっています。
では、整備面において差があるのでしょうか。
実際には、ほとんど差がありません。
というよりも実際には、差があってはいけないのです。
なぜかというと、航空法という法律により、整備基準や期間、さらに整備に関わる人間や運航乗務員の選定に至るまで決められているからです。
この基準を満たすことができない航空機は跳ぶことができませんし、航空会社は乗客を乗せて商売することはできません。
エンジン1つにも「耐空証明」というのが定められており、この証明が切れた飛行機は跳ぶことができなくなります。
整備士も国家資格が与えられ、基準を満たした者が整備した航空機でなければ跳ぶことはできません。
日本国内の航空機は、全てこの基準が適用されるので大手航空会社も格安航空会社も整備の基準は統一されています。
違いがある機体年数
LCCの安全面で違いが出てくるとしたら機体の年数です。
飛行機は乗り物であり、消耗品でもあるので自宅の家電製品などと同じく、製造から使えば使うほど、経変変化が起こり、自宅の家電製品と同じように故障しやすくなります。
航空機でも同じことが起こり、重大な事故につながる危険性があるので、統一された基準があり、期間を決めて基準を満たしているのかどうかの整備と検査が行われます。
しかし、格安航空会社によっては、大手航空会社で使わなくなった中古機を購入しているケースもあり、このような会社は安全面のリスクが高くなります。
日本で飛んでいる格安航空会社は、全ての会社で新造機を購入またはリースしているため、機体年齢も若いのが特徴です。
LCCは安全ではないのか 数字で考える
世界的な航空格付け会社のランキングによると
航空会社が安全であるのかどうかをみる1つの指標として使われる数字がAirline Ratingsの航空格付けランキングです。
毎年航空会社の安全性について審査を行い、星がいくつかで格付けをしています。
星の数が多ければ多いほどよい航空会社になります。
事故の数や重大インシデント、さらには乗務員や整備士の勤務状況も踏まえてランキングされています。
2019年のランキングでトップは、オーストラリアのカンタス航空、他には日本のANAやアメリカのユナイテッド航空も含まれています。
このランキングにおいて最高位である星7を獲得している格安航空会社も10社あり、フライビー、フロンティア航空、香港エクスプレス航空、ジェットブルー航空、ジェットスター航空、ジェットスター・アジア航空、トーマス・クック航空、ボラリス航空、ブエリング航空、ウエストジェット航空、ウィズ・エアが入っています。
日本路線を持っており、なじみのある航空会社としては香港エクスプレス航空、ジェットシスター航空、ジェットスター・アジア航空などが入っています。
格付けの下位にもLCCがいっぱい
上位ばかりが目につくランキングですが、実際には星3つや4つのところにもたくさんの格安航空会社が入っています。
星3つ ノックエア(タイ)・エアアジアタイ(タイ)・ライアンエアー(アイルランド)など
星4つ ジェットスター・ジャパン、ピーチ航空、バニラエア(日本)、スピリット航空(アメリカ)など
実は、日本の大手格安航空会社と呼ばれている会社のほとんどが星4つのところにランクされています。
この点からみると日本の格安航空会社は、世界の格安航空会社の中では平均か、それ以下という扱いになります。
日本の国内線を運航する航空会社の格付けは
Airline Ratingsの航空格付けランキング(2019)を日本の国内線を運航している航空会社に絞ってランク付けすると以下の表のようになります。
★★★★★★★ | 全日空(ANA)・日本航空(JAL)・春秋航空 |
★★★★★★ | 該当なし |
★★★★★ | 該当なし |
★★★★ | ピーチ・Air Do・バニラエア・スターフライヤー・ソラシドエア・ジェットスタージャパン |
JAL(日本航空)は、2019年 星7つになっていますが、機長の飲酒問題もあり、トップ20の中からは漏れています。
このようにAirline Ratingsのランキングは、事故の数だけでなく、その会社の職員や整備士、さらには定時運航率や欠航率なども審査に大きく影響しています。
日本の格安航空会社であるピーチやジェットスター・ジャパン、バニラエアは、これまで乗客が死亡するような重大な事故は起こしていません。
しかしながらここ数年、星4つから5つのランキングで止まっているところを見ると定時運航率の低さや整備不良による欠航などさまざまな要素が絡み合ってこの位置になっていると推測されます。
日本のLCCの定時制の低さ
Airline Raringsのランキングも航空会社の安全性を知るために1つの指標となりますが、もう1つの指標として、航空関連情報の収集や提供を行うOAG (Aviation Worldwide Limited)の行っている世界の航空会社の定時運航遵守率ランキング「OAG Punctuality League 」もあります。
定時運航遵守率とは、その航空会社が定時に出発・到着できる割合を示しているもので、定時運航できていないところは、欠航率が高く、また、1つの機材でぎりぎりの路線数を飛ばしているので、遅延率も高い傾向があります。
このランキングの2019年版(データは2018年のもの)が発表されました。
まず、全体のトップ20を表すと以下のようになります。
1. コパ航空(89.79%)
2. エア・バルチック(89.17%)
3. 香港航空(88.11%)
4. ハワイアン航空(87.52%)
5. バンコク・エアウエイズ(87.16%)
6. カンタス航空(85.65%)
7. LATAM航空グループ(85.60%)
8. アズールブラジル航空(85.21%)
9. カタール航空(85.17%)
10. KLMオランダ航空(84.52%)
11. 全日空(ANA)(84.43%)
12. ジェットスターアジア航空(84.13%)
13. 日本航空(JAL)(83.99%)
14. エア・アスタナ(83.52%)
15. シンガポール航空(83.46%)
16. デルタ航空(83.08%)
17. イベリア航空(83.04%)
18. ソラシドエア(82.90%)
19. マンゴー航空(82.88%)
20. アリタリア-イタリア航空(82.87%)
全体で見ると1位はパナマのコパ航空、日本の全日空は11位、日本航空は13位、ソラシドエアが18位になっています。
そしてこのランキングは、LCC(格安航空会社)のトップ20も発表しています。
1. アズールブラジル航空(85.21%)
2. ジェットスターアジア航空(84.13%)
3. ソラシドエア(82.90%)
4. マンゴー航空(82.88%)
5. ボラリス(82.04%)
6. トランサヴィア航空(81.98%)
7. インディゴ(81.70%)
8. タイエアアジア(81.24%)
9. スピリット航空(80.83%)
10. スカイ航空(79.89%)
11. ゴル航空(79.70%)
12. エアアジア・インディア(79.03%)
13. サウスウエスト航空(78.20%)
14. ヴァージン・アメリカ(77.57%)
15. アレジアント航空(76.92%)
16. フライナス(76.79%)
17. ウエストジェット航空(76.26%)
18. ノルウェー・エアシャトル(74.57%)
19. ジェットスター航空(74.33%)
20. エアプサン(74.08%)
なんと日本の主要格安航空会社である「ジェットスター・ジャパン」や「ピーチ」「バニラエア」といった顔ぶれは含まれていません。
ソラシドエアがLCC部門で入っていますが、機内サービスもあり、受託荷物も無料なのでLCCとは言いにくいエアラインです。
このランキングを見ても、日本のLCCの評価が低いことが分かります。
どうやって安全性の高いLCCを選ぶのか
ランキングが低いからと言ってもLCCを利用することに問題があるわけではありません。あとは利用する人の選択次第です。
大手には、マイレージサービスやラウンジサービス、受託手荷物の無料、そして定時運航率の高さやサービスの充実といったメリットがあります。
一方でLCCには運賃の安さというメリットがあります。
あとはこの差をどう考えるかで、主要航空会社を選択するのかLCCを選択するのかが決まります。
まとめ
- LCCの安全性は、国内で統一された基準で整備・運航されているので大手航空会社との間で差はない。
- ただし、世界的な格付けランキングや定時運航率のランキングから見るとANAやJALは高い位置にランクインしているが日本のLCCは低い扱いになっている。
- 航空会社を選択するときには、運賃を見るだけでなく、マイレージや受託手荷物の扱いなどトータルで比較して利用するのが賢い方法である。
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